- (株)神戸製鋼所の溶接棒「ZERORD-44」について
溶接棒ってめちゃくちゃ種類があるんだけど一体なにから覚えたらいいの!?
やっぱり使用している人の多いメジャーな溶接棒から覚えていくのがいいんじゃないかな。
本日紹介するのはもしかしたら業界外の方でも見たことや販売したことがあるかもしれない、そんなメジャーな溶接棒です。
本記事では(株)神戸製鋼所の溶接棒「ZERODE-44」について解説します。
ちなみに以前は「Z-44」という名称でしたが、現在は「ZERODE-44」という商標で販売されています。
しばらくは市場に「Z-44」と「ZERODE-44」が混在すると思うけど、2種類とも同じものだよ!
溶接棒について勉強しはじめの方におすすめできる記事となっています。
ZERODE-44の性能について
(株)神戸製鋼所のZERODE-44紹介ページより、性能をみていきます。※画像はZ-44のもの
- ヒューム量が少ないため環境にやさしい。
- 再アーク性、スラグ剥離性に優れ、断続溶接・すみ肉溶接・タック溶接(仮付け)に適している。
- 曲げても使用でき、3.2mm以下の棒径では立向下進溶接ができる。
- 難吸湿で乾燥を省略できる。
上記のような特長をもったZERODE-44は正に使いやすい溶接棒だといえます。
ヒューム量が少ないため環境にやさしい
ヒューム…溶接した際に発生する有害なちり
ZERODE-44は他の同系溶接棒と比較して、溶接時に発生するヒュームが30%程度抑えられています。
近年、溶接時に発生するヒュームが特定化学物質に該当するようになり、作業者や環境への配慮を求められています(参考記事はこちらから)
少しでもヒュームの少ない溶接材料を使用することを検討されている方におすすめの溶接棒となっています。
神戸製鋼の製品で「Z」と記載されているものは低ヒュームを意味しているんだ。
再アーク性、スラグ剥離性に優れ、断続・すみ肉・タック溶接に適している
同社製の仮付け用溶接棒「LB-52T」と同様にZ-44も再アーク性に優れているため、仮付け溶接に適しています。
さらにZERODE-44は仮付けのみならず本溶接でも使用できるので、あらゆる溶接状況に対応することができます。
曲げても使用でき、3.2mm以下の棒径では立向下進溶接ができる
溶接姿勢の中で、立向下進溶接(くだりの溶接)を推奨している溶接棒は実はあまり多くありません。
神戸製鋼で代表的なくだり溶接の棒というと「LB-26V」が挙げられるんだけど、それくらいかな…
3.2mm以下という制約はあるものの、立向下進溶接で使用できる溶接棒は貴重です。
本当の意味でオールポジションで使用できる溶接棒として、ZERODE-44は挙げられます。
難吸湿で乾燥を省略できる
本来溶接棒は、使用前に乾燥庫に入れて乾燥させてから使用することが望ましいです。
特に低水素系という系統の溶接棒は、乾燥処理を行ってから使用すべき溶接棒だといえます。
その面倒くさい乾燥処理を、ZERODE-44は省くことができるわけですから、設備がなかったり、開けてからすぐに使いたい方にはうってつけです。
ZERODE-44の短所
良いことばかり書いてきましたが、当然得意としていない要素もあります。
ZERODE-44は「ライムチタニヤ系」という系統の溶接棒に分類されるのですが、イルミナイト系溶接棒と比較するとX線性能が劣ります。
さらには低水素系溶接棒と比較して、溶接金属の機械的性質が優れておりません。
そのため溶接後の検査がある構造物や試験、強度を求められる箇所などには採用されません。
ZERODE-44が全ての溶接シーンで使えるわけではないのか。
短所も理解しつつ、使ってはいけない箇所では他の溶接棒を選択できるようになるといいでしょう。
まとめ:溶接棒はZERODE-44から覚えて知識を拡げていこう
- ZERODE-44の長所
- ヒューム量が少ない。
- 再アーク性、スラグ剥離性に優れ、さまざまな溶接で使用できる。
- 3.2mm以下の棒径では立向下進溶接でも使用できる。
- 乾燥を省略できる。
- ZERODE-44の短所
- X線性能が劣る
- 強度を必要とする箇所の溶接には不向き
ZERODE-44はその溶接性と作業性の良さで、国内において圧倒的な支持を得ている溶接棒です。
しかし万能なZERODE-44といえど、全ての鋼材や溶接シーンで使用できるわけではないというところが溶接の奥深さです。
とはいえ紹介してきたように、他の溶接棒よりも比較的オールラウンドな溶接棒であることは間違いないでしょう。
「溶接棒をください」というような情報が少ない問い合わせがあり、こちらで溶接棒を選定するのであれば、私は「ZERODE-44」を選択することでしょう。
相手からの要望が少ない場合に選定する溶接棒としては、ZERODE-44は第一候補だと思うよ。
まずはZERODE-44を理解し、そこから発展させてZERODE-44では不向きな溶接に対応できる溶接棒を覚えていきましょう。