溶接ヒューム規則改正について個人的に考察してみました

溶接ヒュームが労働者の健康状態に悪影響を及ぼすということで、令和3年4月から労働安全衛生施工令、特定化学物質障害予防規則(特化則)が改正されていることをご存じでしょうか?

改正の内容について詳しくは厚生労働省のホームページからご確認ください。

厚労省が公開しているパンフレットを確認すると、全体換気装置や局所排気装置といった製品を導入するように書かれています。

環境改善が大事なのはわかるけど、溶接作業を行う場所すべてに集塵機を導入するのは厳しい…。

個人的な見解ですが、今回の規則改正で最も言いたいことは、作業場のヒューム濃度に対応した防塵マスクを選定することにあると考えます。

もしヒューム濃度の測定結果が高かったとしても、作業者のマスクを指定防護係数の高いものにすればいいわけです。

しかし、高性能な防塵マスクは高額になってくるため、なるべくなら買い替えたくないというお客様は多いでしょう。

本記事ではお客様にあまり負担をかけないヒューム対策を考察してみたよ。

本記事でわかること

  • 現在使用している防塵マスクから目標とするヒューム濃度を設定するという考え方
  • 集塵機以外のヒューム対策:ヒューム発生量の少ない溶接材料を使用する

現在使用中の防塵マスクから目標とするヒューム濃度を設定する

現在防塵マスクで最も使われているものは、興研(株)の「1005R」を代表とした“指定防護係数10″の防塵マスクです。

作業者や経営者からすれば、今使用しているマスクをそのまま使い続けたいと思うはずです。

仮に先ほど紹介した1005Rマスクを使っているとすれば、作業場のヒューム濃度がどの程度であれば1005Rを引き続き使用できるかを考えてみます。

使用しているマスクからヒューム濃度の目標値を割り出す

要求防護係数PFr=C/0.05 (C:ヒューム中のマンガン濃度の最大値)

上記の計算式は厚生労働省のパンフレットからも確認できるよ。

防塵マスク1005Rは指定防護係数10のマスクだから、PFr=10を入れてCを求めてみよう。

C=10X0.05

=0.5(mg/㎥) 

ヒューム測定結果のマンガン濃度が0.5mg/㎥以下であれば、指定防護係数が10である1005Rマスクを継続して使用可能ということがわかります。

厚労省の公開しているパンフレットでは、ヒューム濃度を0.05mg/㎥以下にしなければならないような書き方をしています。

しかし、今現在使っているマスクを継続して使えたらいいという考えであれば、目標とするヒューム濃度は0.05mg/㎥よりもゆるくなります。

使っているマスクはユーザーにより様々だけど、この考え方を持つことでどれだけヒューム濃度を下げたらいいか考えやすくなるよ。

集塵機を導入する以外の対策:ヒューム発生量の少ない溶接材料を使用する

今回の規則改正の対策製品として真っ先に思い浮かぶのはヒュームを吸引する集塵装置です(ヒュームコレクタ)。

たしかにヒュームコレクタを導入すれば、ヒュームが発生した瞬間に吸引することができるので、明確にヒューム濃度低下が期待できるでしょう。

でも値段高いし、置き場ないし、電気使うし…

イニシャルコスト、ランニングコスト、工場のスペースと電気容量を考慮すると、導入のハードルは高い設備といえます。

そこで別の対応として、ヒューム発生量の少ない溶接材料を使用するという対策を提案します。

発生したヒュームをとるのではなく、元々の発生量を抑えるという考え方だね。

神戸製鋼所の低ヒューム溶接材料(一例)

  • 被覆アーク溶接棒:Z-44
  • ソリッドワイヤ:SE-50T
  • フラックス入りワイヤ:DW-Z〇〇〇、MX-Z〇〇〇

ヒュームを吸引する大掛かりな機械を導入するよりも、ヒューム発生量の少ない溶接材料を使用していく方が、簡単かつ低コストな解決策かもしれません。

被覆アーク溶接棒:Z-44

国内の代表的な溶接棒でもある「Z-44」はヒュームの発生量が少ない溶接棒です。

強度を求められる部位に使用することはできませんが、汎用的な軟鋼用の溶接棒として多くの場所で採用されています。

>>溶接棒「Z-44」の紹介記事はこちらから

ソリッドワイヤ:SE-50T

「SE-50T」は銅メッキがされていないソリッドワイヤであり、メッキが原因で起こるヒュームの発生量が少ないという特長があります。

銅メッキされていないから、環境改善だけでなく溶接性や送給性の改善も期待できるよ。

>>銅メッキなしソリッドワイヤ「SE-50T」の紹介記事はこちらから

フラックス入りワイヤ:DW-Z〇〇〇、MX-Z〇〇〇

「DW-Z100」や「DW-Z110」、「MX-Z200」といった製品名の中に”Z”の入ったフラックス入りワイヤはヒューム発生量を抑えた品番になります。

従来の同社製ワイヤと同様に高性能なフラックス入りワイヤですから、他社からの乗り換えも問題ないでしょう。

Z-44もそうだけど、神戸製鋼所の製品名によくある”Z”は低ヒュームという意味なんだ。

最後に

どこから手をつけてよいかわかりにくい今回の規則改正を、個人的に考察してみました。

本記事のおさらい

  • 現在使用している防塵マスクからヒューム濃度の目標値を設定する
  • 集塵機以外のヒューム対策もある:ヒューム発生量の少ない溶接材料を使用する

とにかくヒューム濃度を下げなければいけない!と考えるのではなく、使用しているマスクが使えるまで下げると考えてみよう!

今まで実施していなかったことをやるということは、事業者の方々からすればかなりの負担になります。

本記事ではそのご負担を軽減できるかもしれない考え方と対策を提案をさせていただきました。

お気軽にお問い合わせください

本社TEL:083-248-0404
彦島TEL:083-267-1413
受付時間:8:00~17:00(土は12:00)【日・祝日を除く】