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ステンレス鋼における溶接材料の基礎知識【SUS304には308】

本記事を読んでわかること
  • 溶接で使用されることの多いステンレス鋼種SUS304について
  • SUS304、SUS316に適した溶接材料について
  • ステンレス鋼と鉄の異材溶接に適した溶接材料309について
  • LがついたSUS溶接材料について

304とか309とかステンレスのことが全然わからないんだけど…。

たしかに最初はよくわからないね。
じゃあステンレスの溶接材料選びで特に知っておいてほしい内容を知っていこう。

溶接する機会が多い鋼材として、鉄以外ではステンレス(SUS)が挙げられます。

ステンレス…Cr(クロム)を12%以上含む合金鋼。鋼にCrを混ぜることで錆びにくくなる。

ステレンスは鉄よりも錆びにくい鋼材として、実生活のあらゆるところで使用されています。

鉄だけでなくステンレスにも多くの種類があるため、どこから学ぶべきかわからないという方も多いでしょう。

本記事では、ステンレス鋼の溶接でもっとも使用されているであろうSUS304やSUS316に絞って解説しております。

ステンレス鋼の溶接において、はじめに覚えておきたい基本的な内容になりますので、これから勉強をはじめる方は是非最後まで読んでみてください。

目次

溶接で使用されるステンレス鋼はSUS304が多い

SUSの溶接棒を持ってきてって頼まれちゃった!いったい何を持っていけば…。

例えばSUSの溶接材料の注文があったとして、相手方からステンレス材料の指定が特にないようであれば、SUS304のことを言っている可能性が高いです。

SUS304はオーステナイト系ステンレスという種類に分類され、ステンレス鋼の中でも腐食に強く、溶接しやすい鋼種になります。

オーステナイト系ステンレスについて
  • 代表的なステンレス鋼種はSUS304、SUS316
  • 耐食性、加工性、高温化での機械的性質、溶接性に優れる
  • 磁性がない

上記のような特徴から、ステンレスの溶接で最も使用される材料は、オーステナイト系のSUS304であるということを最初に覚えておきましょう。

錆びにくく、熱や衝撃に強いからタンクや浴槽、台所の流しや食器などに使用されているんだ。

補足としてオーステナイト系以外にはどのようなステンレス鋼種があるのかも見ておくと良いでしょう。

補足 ステンレス鋼の大分類
オーステナイト系二相系(オーステナイト+フェライト)フェライト系マルテンサイト系
系統Cr-Ni系Cr-Ni系Cr系Cr系
代表的な鋼種SUS304
SUS316
SUS329J4LSUS430SUS410
磁性無し 有り有り有り
ステンレス鋼の大分類一覧

本記事でメインで紹介するオーステナイト系はCr(クロム)の他にニッケル(Ni)が混ざっているCr-Ni系というステンレス鋼なんだ。

SUS304はCrが18%、Niが8%入っていることから18Cr-8Niのステンレス鋼とも呼ばれます。

SUS304には308という名称のついた溶接材料を選定する

ステンレス鋼の溶接で第一に挙げられるSUS304ですが、選定する溶接材料の名称には気を付けなければなりません。

SUS304には、308という名称がついた溶接材料を使用します。

SUS304に使用する溶接材料(神戸製鋼所の場合)
アーク溶接棒溶接ワイヤTIG棒
NC-38(※)
NC-38L
DW-308
DW-308L
TG-S308
TG-S308L
SUS304溶接に使用する代表的な溶接材料(神戸製鋼所)

※ 神戸製鋼所のアーク溶接棒はNC-308 という名称ではありません。

SUS304なのに308という名称を使うことに最初は不思議に思うのですが、「そういうものだ」と割り切って覚えてしまいましょう。

SUS304には308…、SUS304には308…。

SUS316には316という名称のついた溶接材料を選定する

SUS304以上に耐食性に優れている(錆びにくい)ステンレス鋼として同じくオーステナイト系のSUS316があります。

この鋼種も溶接する機会が多いため、SUS304とあわせて覚えておくといいでしょう。

SUS316の場合、選定する溶接材料は316という名称の溶接材料を使用します。

SUS316に使用する溶接材料(神戸製鋼所の場合)
アーク溶接棒溶接ワイヤTIG棒
NC-36
NC-36L
DW-316
DW-316L
TG-S316
TG-S316L
SUS316溶接に使用する代表的な溶接材料(神戸製鋼所)

SUS316に対して使用する溶接材料は316という名称が付いたものなので、こちらは覚えやすいです。

SUS304以上に錆びにくいのがSUS316か…。

SUS304とSS400の溶接は309という名称のついた溶接材料を選定する

先ほどまでに紹介していた溶接材料は、あくまでステンレス鋼同士を溶接する場合です。

それではよくある例として、ステンレス鋼SUS304と軟鋼SS400を溶接する場合はどの溶接材料を選定するべきでしょうか。

SUS304だから308?いや、鉄用の溶接材料かな…?

実はそうではありません。

SUS304とSS400の異材溶接では309という名称の溶接材料を選定します。

異材溶接に使用する溶接材料(神戸製鋼所の場合)
アーク溶接棒溶接ワイヤTIG棒
NC-39
NC-39L
DW-309
DW-309L
TG-S309
TG-S309L
異材溶接に使用する代表的な溶接材料(神戸製鋼所)

なぜ309の溶接材料を使うのか

ステンレス鋼と鉄の溶接なら309を使用するのが異材溶接の基本的な知識ですが、なぜなのかも併せて覚えておきましょう。

SUS304とSS400の溶接の場合、溶接時にSS400(鉄)の溶け込み量が多くなると、ステンレス側のCrとNiが減ってしまいます(希釈)。

CrとNiが減ってしまった溶接箇所は、元の部分とは異なった成分組織になってしまうため、割れやすくなってしまいます。

そこでSUS304(18Cr-8Ni)の成分が鉄側に希釈されることを考慮して、309(22Cr-12Ni)というCrとNi当量の多い溶接材料を使用します。

ステンレス鋼種によっては309以外の材料を使用する場合もありますが、基本の知識としてここまでは覚えておきたいところです。

>>より詳しく知りたい方はメーカー資料を参考にしてください。

ステンレスの溶接材料が欲しいと言われたときは念のためにSUS同士の溶接なのか、SUSと鉄の溶接なのかも聞けるといいね。

Lつきのステンレスについて

先ほどから紹介している溶接材料の名称に”L”がついているものがありますが、このL付きのステンレス材料も販売機会が多いので意味をみていきます。

L=”Low Carbon”を意味しており、炭素(C)の量が少ないステンレス鋼です。

炭素が少ないことでメリットがあるの?

オーステナイト系ステンレス鋼の溶接不具合で粒界腐食と呼ばれる現象があります。

その粒界腐食を防止する方法として、炭素(C)当量の少ない溶接材料が使用されます。

粒界腐食…長時間高温になった溶接金属周辺のCrが炭素と結合することでクロム炭化物になり、その部分の耐食性と強度を著しく劣化させる現象

簡単にいうとCr(クロム)をC(炭素)とくっつけさせないように、あえてC当量の少ない材料を使って対策するということです。

Cが少ないということもあり、強度はLなしのものと比較すると劣ります。

L以外の英語がつくものもあるけど基本知識としてL付きだけは確実に覚えておこう!

基本的にはSUS304で溶接する箇所の材料に308Lを使用しても良いとされています。逆にLつきの材料を使わないといけないところでLなしの材料を使用することはご法度です。

まとめ:ステンレス鋼といえばオーステナイト系、309とL付きも併せて覚えよう

本記事のおさらい
  • ステンレス鋼といえばオーステナイト系のSUS304
  • SUS304以上に錆びにくいのが同じくオーステナイト系のSUS316
  • SUS304の溶接材料には308という名称のものを使用する
  • SUS304とSS400(鉄)の異材溶接には309という名称の溶接材料を使用する
  • L付きのステンレスはC(炭素)の量が少なく、粒界腐食対策になる

ステンレス鋼の溶接を学ぶ上で知っておきたい一般的な内容だけを書いてきました。

結構覚えることが多いぞ!?

まずはSUS304には308という溶接材料を使用するということから覚えておこう。

304の溶接棒が欲しいという注文と308の溶接棒が欲しいという注文は、同じことをいっているとわかるようになることが最初の一歩かと思います。

そこからステンレスと鉄の異材溶接では309を使う、L付きの溶接材料というのもある、ということを順に理解していきましょう。

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