- 溶接用ケーブルに関する知識
- ホルダー線の作り方

溶接機を納品したらケーブルないやんって言われてしまった…。



ケーブルが付属している溶接機もあるけど、長さが足りなかったりする場合があるから別にケーブルが必要かどうかは確認しないとね。
ガス・溶材商であれば「ホルダー線(またはアース線)を作ってほしい」と依頼されることがあるでしょう。
本記事では交流/直流アーク溶接機やエンジンウェルダーを納品した際に必ずといってもいいほど、セットで用意することになる溶接用のケーブルについて解説します。
ホルダー線やアース線と呼ばれるものがどんなものか、またどのようにして作るのかを知らない方は参考にしてみてください。
溶接用ケーブルについて


本記事で解説している溶接用ケーブルは、一般的に2次側と呼ばれる側で使用されるケーブルのことになります。
ブレーカーから溶接機間のケーブルが1次側(1次線や入力線とも呼ばれる)
溶接機から溶接する対象間のケーブルが2次側(2次線や出力線とも呼ばれる)
ホルダー線やアース線は2次側溶接用ケーブルのことを指しており、お客様の希望に応じてケーブルを作成する必要があります。



業界内では1次側や2次側といった表現をよく使うので必ず理解しておこう。
ケーブル作りに必要なもの
ホルダー線やアース線を作るにあたってどのようなものが必要なのかをみていきます。
溶接用キャブタイヤケーブルWCT


溶接用に使用する太いケーブルはキャブタイヤと呼ばれることが多く、その中でもWCTという名称のケーブルが広く使用されています。
WCTにも様々な規格があり、使用する溶接機に応じてケーブル太さを選ぶ必要があります。
使用する溶接機 | 推奨するWCTケーブルの太さ |
200A以下までの溶接機及びエンジンウェルダー | 22㎟以上 |
250A~350Aの溶接機及びエンジンウェルダー | 38㎟以上 |
500A以上の溶接機及びエンジンウェルダー | 60㎟以上 |
ケーブルを伸ばす長さにもよりますが、一般的には上図のような溶接機とケーブル太さの組み合わせが基本になります。



WCTケーブルは22,38,60㎟のものがよく使用されるよ。
表内よりも更に大きいクラスの溶接機や、ケーブル長が長い場合はより太いケーブルを使う場合もあります。
溶接棒ホルダー


ホルダー線はアーク溶接棒を使用するためのケーブルですので、溶接棒を挟むための溶接棒ホルダーが必要です。
溶接棒ホルダーもキャブタイヤケーブルWCTと同様に使用する機械によって変わります。
主に300Aまでの機械であれば〇〇-300と呼ばれるホルダーを、500Aまでの機械であれば〇〇-500という製品名のホルダーを選定しておけば間違いないでしょう。
アースクリップ


アース線(母材ケーブル)はケーブル先端に上画像のようなアースクリップという部品をつけているケーブルになります。
左のアースクリップは万力タイプ、右のアースクリップはクリップタイプと呼ばれており、お客様の希望にあわせて選定します。
また、ホルダーと同様に使用する機械によってアースクリップの大きさが変わり、こちらも300Aまでの機械につけるのであれば〇〇-300、500Aまでの機械なら〇〇-500という製品名のアースクリップを選べば問題ありません。
ケーブルジョイント


溶接機に直接接続する場合は必要ありませんが、ホルダー線やアース線はケーブルジョイントをつけて着脱しやすいようにするのが一般的です。
ただしホルダー線やアース線に使用するケーブルジョイントは画像左のプラグ側(オス)のみのため、ケーブルジョイントのソケット側(メス)が余ってしまうということがよくあります。



在庫でケーブルジョイントのソケット側(メス)が余るのは溶材商あるあるだと思う…。
実際にホルダー線を作ってみた


- キャブタイヤケーブルWRCT38㎟
- 三立電器工業(株)ケーブルジョイントJA-300(プラグ側のみ)
- 三立電器工業(株)ホルダーS-300
今回はWRCT38㎟というキャブタイヤケーブルを使用して作ります。



WRCTってなに!?



WRCTはWCTよりもさらに柔軟なケーブルで、ホルダー操作がより快適になるんだ。
WCTよりも柔らかく扱いやすいキャブタイヤケーブル。柔らかいケーブルで作ってくれと頼まれたらWRCTを選びましょう。
ホルダー線と呼ばれるものはこのWRCTで作ったケーブルを指していることも考えられるので注文を受けた場合は確認しておきましょう。
POINT!:ホルダーのハンドル部分を先にケーブルに通しておく


ホルダーはハンドル部分が外れるようになっており、外したハンドル部を先にケーブルに通しておく必要があります。



ケーブルジョイントを取り付ける時にもあった先に通しておくやつだ!
ケーブルにケーブルジョイントをつけたり、ホースにカプラをつけたりするときにも行った方法です。先に部品を通しておくということをホルダーでも実施します。忘れがちなので注意しましょう。
あとはケーブルジョイントと同様にキャブタイヤケーブルの被覆を付属の銅管分だけ剥き、同じく付属のイモネジで締め付けて固定するだけです(別記事も参考)。


キャブタイヤケーブルの片側にホルダー、もう片側にジョイントのオスを取り付ければ、ホルダー線の完成になります。ホルダーをアースクリップに変えればアース線(母材ケーブル)にもなります。




溶接機の資料では1次側アース線と区別するためか母材ケーブルという書かれ方をしています。
本記事ではアースクリップ仕上げにしていますが、丸端子にしている方も少なくないため、納品する場合は確認しましょう。
最後に:ケーブル作成承ります


- 溶接用ケーブルに使用するキャブタイヤケーブルはWCTと呼ばれるケーブルがよく使用される。
- 使用する機械に応じてキャブタイヤケーブルやホルダー、アースクリップの選定が変わる。
- WCTよりも柔軟なWRCTというケーブルも存在する。
- ホルダー線にはジョイントとホルダー、アース線にはジョイントとアースクリップを取り付ける。
機械に応じたケーブルの選定ができ、ジョイントやホルダーを取り付けることに慣れてくれば、溶接用のケーブルで悩むことはほとんどなくなります。
あとはどれだけの長さが必要なのかなど、お客様の希望に応じて準備するものを変えていきましょう。


当社では本記事のような溶接用ケーブル作成も承っております。もしご入用でしたらお気軽にお問い合わせください。
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