- パナソニックとダイヘンのCO2溶接トーチの違い
- パナソニックとダイヘンのCO2トーチ部品の違い
- 代表的なトーチ部品の紹介
国内の2大溶接機メーカーといえばパナソニックとダイヘンの2社になります。
国内では同程度のシェアを誇っているため、パナソニックとダイヘンの溶接機や部品にどのような違いがあるのかを知っておくことは非常に有用です。
本記事ではパナソニックとダイヘンのCO2溶接トーチ部品(以下:CO2トーチ)を比較しながら、それぞれの部品がどのような役割をもっているのかを紹介します。
溶接機の部品についてこれから勉強しようと思っている方は是非最後までお付き合いください。
交換頻度の多い代表的な部品をパナソニックとダイヘンで比較しながらみていこう。
2社の違いがわかれば、部品選定もやりやすくなるね。
>>CO2溶接がどのような溶接法なのか紹介した記事はこちらから
トーチの色はパナソニックが赤、ダイヘンは青
CO2トーチの色はパナソニックが赤で、ダイヘンは青になります。
業界ではパナソニック製トーチをレッドトーチと呼び、ダイヘン製トーチをブルートーチと呼ぶことで区別しています。
レッドトーチとブルートーチは送給装置に取り付ける部分の構造が異なっているため、他社の溶接機で使用する場合は別売のアダプタを用意する必要があります。
パナソニックとダイヘン、両方の溶接機を使っている御会社も多いから、トーチを頼まれたら何色のトーチか確認することは大事だね。
レッドトーチとブルートーチでは共通で使用できる部品もあるのですが、一方でしか使用しなかったり、互換性がない部品もあります。
次項からCO2トーチに代表される部品をみていきます。
主要なCO2トーチ部品を比較・解説
CO2トーチを構成する部品の中でも、交換頻度が多いのが以下のトーチ部品です。
- チップ
- ノズル
- オリフィス
- インシュレータ
- トーチボディ
- インナーチューブ
- ライナー(コンジットチューブ)
本記事では使用ユーザーの多い350A用のCO2トーチにおける部品を比較しています。
チップ
コンタクトチップとも呼ばれるトーチの先端についている銅色の部品で、CO2トーチ部品の中で最も交換する頻度が多い部品といえるでしょう。
チップは通過してくるワイヤに溶接電流を供給し、アークを発生させる役割をもっています。
チップは互換性があるため、パナソニックのチップであろうがダイヘンのチップであろうがお互いのトーチには取り付きます。
0.9mmのチップを頼まれたんだけどいろんな種類があるの?
チップには穴径があり、使用する溶接ワイヤー径によって使い分ける必要があります。
0.9mmの溶接ワイヤを使用するときはチップも同径の0.9mmを使おう。
穴径以外にも気にしておきたいのはチップの長さで、代表的なものでは長さ45mmのチップと40mmのチップが存在します。
業界では長さ45mmのチップをNチップ(National=昔のパナソニック)、長さ40mmのチップをDチップと呼んだりしますが、今現在使われているのは長さ45のものが多いです。
黒トーチと呼ばれていた旧型のダイヘントーチには長さ40mmチップが使われていた名残で、L40のチップをDチップと呼ぶ習慣が今も残っています。
今現在、レッドトーチもブルートーチもL45のチップが標準でついているため、チップ長さのスタンダードはL45だと覚えておきましょう。
ノズル
チップと同様にトーチ先端についている筒状の部品がノズルです。
半自動溶接では溶接部周辺を大気から保護するために、シールドガス(炭酸ガスなど)を供給する必要があり、ノズルはシールドガスを安定供給させる役割をもっています。
レッドトーチもブルートーチも標準でセットされているのはストレートのノズルですが、先が細くなっているノズルもあります。
狭所を溶接したい、シールドガスの吹き付けを集中させたいという目的で、先が細くなったノズルが使用されるんだ。
ノズルもパナソニック製とダイヘン製で互換性がある部品のため、いろいろな組み合わせで使用しているお客様をお見掛けします。
長さ45mmのチップに対して短いノズルを選定してしまうと、ノズルよりもチップの先端が前にでてしまうため、そのような状態になっているときは組み合わせが間違っています。
しかし使用者による好みの問題もあるため、どの組み合わせが正解というわけではないのかもしれません。
オリフィス
穴が開いたピンク色の部品で、シールドガスを整流させ、溶接時のスパッタからトーチボディを保護する役割があります。
オリフィスがついてなければシールドガスが乱れてしまい、ピットやブローホールといった溶接欠陥の原因にもなりえますので、必ず綺麗な状態のものを使用するようにしましょう。
割れたまま使用しているケースは結構あるので定期的に交換しよう。
オリフィスもパナソニック製とダイヘン製で互換性があります。
インシュレータ
絶縁筒とも呼ばれるトーチボディの先端に取り付く部品で、溶接時の熱伝導を防ぐ役割をもっています。
このインシュレータのネジになっている部分にノズルが取り付くという構造になっています。
インシュレータもパナソニックとダイヘンで互換性があります。
先に紹介したチップ、ノズル、オリフィスほど交換頻度は多くないですが、インシュレータもCO2トーチでは代表的な部品になります。
トーチボディ
ハンドルとインシュレータの間にある曲がっている部品がトーチボディです。
チップやノズル、オリフィスなど頻繁に交換する部品と比較して交換することは少ないですが、その分高価な部品になります。
スタンダードなものは曲がっている上画像のようなトーチボディですが、ストレートのものや、自在に向きを変えられるフレキシブルトーチボディと呼ばれるものも存在します。
パナソニック製とダイヘン製で違いがあり、パナソニックのトーチボディはチップボディと呼ばれる部品が一体となっているのに対し、ダイヘンはチップボディが別売になっています(350A以上のトーチの場合)。
ダイヘンのブルートーチのチップボディは交換できる部品だよ。
後述しますが、パナソニック製のトーチボディの中には溶接ワイヤーが通るためのインナーチューブという部品が入っているのですが、ダイヘン製にはインナーチューブはありません(350A用のトーチの場合)。
インナーチューブ(パナソニック限定)
トーチボディの中に挿入する部品で、溶接ワイヤが安定供給されるのを支える役割をもっています。
パナソニック製のトーチには使用されている部品なのですが、ダイヘン製のトーチにはついていません(350A以上のトーチの場合)。
インナーチューブがなかったら溶接ワイヤが送給されないんじゃないの!?
ダイヘン製の場合、ライナーがトーチボディ先端まで届くように長くしてあるから、それがインナーチューブの役割を果たすんだ。
ダイヘン製で通常の350Aトーチだとインナーチューブは不要なのですが、350Aよりも小さいトーチや、フレキシブルのトーチボディを使用する場合はインナーライナーと呼ばれる部品が必要になります。
ライナー(コンジットチューブ)
トーチケーブルの中に入っているチューブ状の部品で、インナーチューブ同様溶接ワイヤーを安定供給させるための部品です。
ライナーと呼ぶ人もいれば、コンジットチューブと呼ぶ人もいるので、両方の呼び方で覚えておいた方がいいです。
ライナー = コンジットチューブ
溶接トーチの長さによってライナーも長さが変わりますので、注文をうけた場合は何メートルのトーチを使用しているかを確認しておいたほうが良いでしょう。
また、パナソニックとダイヘンで互換性がない部品のため、トーチの品番まで聞いてからライナーを用意したほうが確実でしょう。
常に溶接ワイヤーが通過する部品なので、中にめっき屑やごみがたまってくると送給性が悪くなります。
ワイヤーの送りが悪いと感じることがあればライナーの替え時かも!
ライナーの替え方については以下の記事で解説しております。
まとめ:チップ、ノズル、オリフィス、インシュレータは2社で互換性あり
- パナソニックのトーチは赤いレッドトーチ、ダイヘンは青いブルートーチ。
- 代表的なCO2トーチの部品
- チップ
- ノズル
- オリフィス
- インシュレータ
- トーチボディ
- インナーチューブ
- ライナー
- チップ、ノズル、オリフィス、インシュレータは2社で互換性あり。
- トーチボディ、インナーチューブ、ライナーは2社で互換性なし。
パナソニックとダイヘンで互換性がある部品は、トーチボディより先端にある部品だということがわかります。
パナソニックのトーチを使っているからダイヘンのチップやノズルは使えないというわけではないので、同社製の部品でないといけない場合でない限りは、そこまでこだわる必要はないでしょう。
溶接トーチの部品を扱っている会社は、パナソニックとダイヘンだけではないため、本記事で紹介した内容はその他のメーカー製に対しても使える知識になります。
他メーカーもパナソニック用とダイヘン用という分け方でトーチ部品を販売しているよ。
国内で使用ユーザーの多いCO2溶接機はパナソニックかダイヘンなので、まずはこの2社の部品から理解していきましょう。
コメント
コメント一覧 (1件)
溶接系の新人営業ですが、非常にわかりやすい構成と解説なのでいつも有難く読ませていただいています。
ブログ形式ならではのペールトーン風味とも贅沢な行間、差し込まれるかわいらしいコメントが目の息抜きになるのでとても読みやすいです。
今後も参考にさせていただきます。