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溶接機の引き合いを受けた際に知っておくべき知識と設置に必要なもの

本記事を読んでわかること
  • 半自動溶接機の標準構成品について
  • 標準構成品以外の設置に必要なものが何なのか

当社のようなガス・溶材商では半自動溶接機の引き合いをたびたびいただきます。

半自動溶接…炭酸ガスや混合ガスをシールドガスとして使用する最も一般的な溶接法

半自動溶接機の注文をもらえたよ!

おめでとう!
ところで延長ケーブルや1次側ケーブルも持っていくの?

え!?なにか他に用意しないといけないの!?

半自動溶接機のセットといえば一般的には以下のとおりです。

  • 溶接電源
  • 送給装置
  • トーチ
  • 調整器

実際は上記のものだけで済むということはほとんどなく、ガス(炭酸ガスなど)であったり、溶接機とブレーカーまでをつなぐ線であったり、他に用意しなければならないものが多数存在します。

他に用意するものをわかっていないと、最終的に見積した金額と合わなかったり、現場で何度も打ち合わせしなくてはならないということにもなりえます。

本記事ではこれまで何度か溶接機を販売・設置してきた私が半自動溶接機の引き合いがあった際に覚えておくと便利な内容をまとめていますので、初めて溶接機を販売する方や、販売経験が少ない方は是非最後まで読んでみてください。

すぐに使用できる状態で持ってきてほしいって言われてるんだ…

目次

半自動溶接機の標準構成品について

”パナソニック溶接機RX1カタログより引用”

冒頭でも紹介したように、半自動溶接機の標準構成品とは以下のものになります。

  • 溶接電源
  • 送給装置
  • トーチ
  • 調整器

半自動溶接機が欲しいから見積してほしいという依頼があった場合、上記4点は見積項目に入りますので、選定する際に注意すべきことをそれぞれみていきます。

本記事ではパナソニックの350RXという半自動溶接機を例にして解説していきます。

溶接電源

溶接機といえばこの溶接電源を指します。溶接電源によって送給装置やトーチの型式まで変わってきますので、まずは電源の選定を間違わないようにしましょう。

送給装置

溶接ワイヤーをセットし、トーチのスイッチを押すことでワイヤを送り出すことができる機械です。溶接電源が決まりさえすれば送給装置に何を選ぶかは自動的に決まってきます。

トーチ

溶接作業者が手にもって操作するハンドル型のものをトーチと呼びます。

トーチも溶接機によって変わるところが多いのですが、一般的な350Aの半自動溶接機(本記事では350RX)の場合は初めにトーチの長さを確認しましょう。

一般的なCO2トーチの標準長さは3.0mか4.5mか6.0mです。

また、軽量タイプと高使用率タイプという2種類のトーチタイプがあり、これらはそれぞれ必要な部品が異なるため分けて覚えておく必要があります。

パナソニックダイヘン
軽量タイプ高使用率タイプ軽量タイプ高使用率タイプ
3.0mYT-35CE4YT-35CS4BT3500-30BT3510-30
4.5mYT-35CEM4YT-35CSM4BT3500-45BT3510-45
6.0mなしYT-35CSL4BT3500-60BT3510-60
代表2社のCO2トーチの区分け

軽量タイプのトーチと高使用率タイプのトーチの見た目が似すぎててわかりにくい…。

送給装置にとりついているトーチの根本に書いてある製品名をみるか、トーチの握り部分(ハンドル)が太いかどうかなどを確認しよう。

調整器

ガスの調整器も標準構成品に含まれています。新たに溶接機を1台増やすということは、その隣にガスも備え付けることが多いです。

「溶接機が1台増える=ガスも1本増える」ということを覚えておこう。

電源や送給装置とは違い、調整器は持っているから入れなくていいという場合が結構ありますので、一応必要かどうかは確認しておいたほうがよいでしょう。

集合装置やタンクから配管してガスを供給しているお会社様だと調整器が不要の場合があります。

標準構成品ではないが用意するべきものについて

使用できる状態で納品するためには前項で紹介した4点以外にも用意するべきものがあるので、それを確認していきます。

特に重要度の高いものは、使用環境によって長さなどの仕様が変わる部品でもあるため、準備するのに注意が必要です。

部品名重要度
延長ケーブル
入力線(1次線)
接地ケーブル
母材ケーブル
リモコン
ガス
溶接ワイヤー
標準構成品以外で別途必要になるかもしれないもの一覧

見積の際にはどれだけのものを別途用意する必要があるかを把握しておかなければなりません。

延長ケーブル

部品名重要度
延長ケーブル

溶接電源と送給装置をつなぐケーブルセットで、標準構成品ではありませんが必ずといっていいほど必要なものになります。

350RXの場合はパワーケーブル(キャブタイヤケーブル)と制御ケーブル、炭酸ガスホースの3本セットになっており、お客様の使用環境によって長さを選ぶ必要があります。

溶接電源によっては延長ケーブルが4本組や2本組のものがあります。

溶接電源と送給装置をつなぐケーブルは標準で2m程度しかついていないため、延長ケーブルがないと使用できる範囲が極端に狭くなってしまいます。

延長ケーブルはほぼ必要な部品といえるので、溶接電源からどれくらいの範囲で使用したいかを確認しておこう。

延長ケーブル入荷時は3本組のケーブルが束ねられておらず、納品の際はビニールテープやインシュロックでケーブルをまとめてから納めるのが基本になります。

入力線(1次線)

部品名重要度
入力線(1次線)

工場の配電箱(ブレーカー)から溶接電源までをつなぐケーブルで、入力線や1次線と呼ばれるケーブルです。
溶接機一式のセットには付属されていないため、別途用意しなければなりません。

溶接機の買い替えであれば以前つけていたものを外しそのまま使用することもできますが、増設であれば必要になる可能性は高いです。

設置予定場所を確認し、そこからブレーカーまでどのくらいの距離があるかをあらかじめ調べておきましょう。

1次線を見積に入れてなかった!

標準構成品以外に必要なものをどれだけ見積書にいれるかが悩ましいところだね。

さらに1次線はそのままの状態では使用することができず、溶接電源とブレーカーに接続するために、両端の被覆を剥いで丸端子をとりつけるという加工まで必要になります。

溶接電源YD-350RX1
電源設備容量 商用電源の場合 kVA15.4以上
電源設備容量 エンジン発電機の場合 kVA30.8以上
ヒューズ(B種)(ノーヒューズブレーカー) A40(60)
入力側ケーブル(端子穴)㎟8以上(M5用)
接地ケーブル ㎟8以上
350RX1の電源設備容量及び必要ケーブルの太さ

溶接機のカタログをみると上記のようなデータが記載されており、ここから入力側にどのようなケーブルを用意しなければならないかがわかります。溶接電源によっては非常に太いケーブルが必要になる場合もあるので必ず確認しておきましょう。

350RXの場合、電線1本あたりの面積が8㎟以上必要で、M5のネジが通せる端子穴径5~6ほどの丸端子を両端につけなくてはなりません。

すぐに使用できる状態での納品が求められているのであれば、下図のようにケーブルの加工まで行いましょう。

キャブタイヤ8×3芯に8-6端子をとりつけた状態のケーブル

接地ケーブル

部品名重要度
接地ケーブル

溶接電源の背面に接地マークがついたネジ部があり、そこから接地ケーブルを接続することで接地工事を行ってください。

溶接電源YD-350RX1
電源設備容量 商用電源の場合 kVA15.4以上
電源設備容量 エンジン発電機の場合 kVA30.8以上
ヒューズ(B種)(ノーヒューズブレーカー) A40(60)
入力側ケーブル(端子穴)㎟8以上(M5用)
接地ケーブル ㎟8以上
350RX1の電源設備容量及び必要ケーブルの太さ

入力側ケーブルと同じく接地ケーブルもカタログから必要な能力を調べることができます。具体的なケーブル太さが明記されているか、「入力線と同等以上」のような書き方がされている場合もあります。

弊社の場合、接地に使用する電線は緑色のIV線とよばれるものを使うことが多いです。

接地ケーブルはつけなくても溶接機を使うことはできますが、安全のためには接地工事をしておきましょう。

母材ケーブル

部品名重要度
母材ケーブル

配電箱(ブレーカー)から溶接電源までのケーブルを1次線や入力線と呼ぶのに対し、溶接電源から先のケーブル類を2次線や出力線と呼びます。

母材ケーブルは2次線と呼ばれるケーブルの1種で、溶接のアース用として必要なケーブルになります。

ケーブル先端にアースクリップをとりつけて納品することが多く、客先で持っていなければ1次線と同様に製作して用意しなければなりません。

アースクリップは万力型かクリップ型が多い

母材ケーブルも長さを確認しておかないといけないの!?

長さの確認もだし、細かいところまでいうとケーブルジョイント接続にするかとかまで打合せしておく必要があるよ!

リモコン

部品名重要度
リモコン

遠隔で電流や電圧の数値を変更することができる部品がリモコンです。送給装置に付属されていたり、標準構成品に入っていることがほとんどなのですが、溶接機によっては別売りのオプションになっていることもあるため注意が必要です。

必要度でいえば☆5なのですが、だいたいの溶接機に標準品として含まれていることを考えて☆3としました。

ガス

部品名重要度
ガス

半自動溶接にかかせないのがシールド用のガスで、CO2溶接であれば炭酸ガス、MAG溶接であればアルゴン炭酸混合ガスのボンベが必要です。

当社のようなガス屋であれば溶接機と併せて用意するのは簡単ですが、機械工具商の方が溶接機を販売する場合ですと、ガスの供給をどうするかは打合せしておいたほうがいいでしょう。

溶接ワイヤー

部品名重要度
溶接ワイヤー

溶接に使用するワイヤーも別途用意する必要がありますが、大体お客様が持っていることが多いので、ワイヤーに関してはそこまで気にしなくてもいいでしょう。

なにか選定しなければならない場合は、スラグ系のフラックス入りワイヤか、低電流用ソリッドワイヤのどちらかを選んでおくのが無難かな。

まとめ:溶接機以外に必要なものを知っておきましょう

本記事のおさらい
  • 溶接機の標準構成品は以下のとおり
    • 溶接電源
    • 送給装置
    • トーチ
    • 調整器
  • 標準構成品だけでは溶接機は使えない
  • セット品以外に覚えておきたい必要なものは以下のとおり
    • 延長ケーブル
    • 入力線(1次線)
    • 接地ケーブル
    • 母材ケーブル
    • リモコン
    • ガス
    • 溶接ワイヤー
  • どれだけの用意が必要か、ケーブル類は長さをどうするか等の打ち合わせが必要

溶接機以外にもいっぱい用意するものがあるじゃないか!

そのとおり!
それにケーブル作りといった前準備まで含めるとなかなか大変な商品なんだよ。

「溶接機一式だけ持ってきてくれたらあとは自分たちで用意するからいいよ」というお客様ならいいのですが、ケーブルなど必要なものを手配から加工まですべて準備し、設置も手伝う場合だと納品が一気に大変になります。

さらには機械なので不具合が起きた場合の対応まで考えると、アフターケアのことを踏まえた上で販売したい商品です。

溶接機を使えるようにするためにはどれだけのものが必要なのかを理解しておけば、打ち合わせがスムーズに進められるでしょう。もし溶接機を販売したり購入したりすることがあれば是非本記事の知識を活かしてください。

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