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【高能率】メタル系フラックス入りワイヤの基本を解説【MX・SM】

本記事を読んでわかること
  • メタル系フラックス入りワイヤの特徴
  • メタル系フラックス入りワイヤの分類と各タイプの違い

半自動溶接に使用される溶接ワイヤといえば、ソリッドワイヤとフラックス入りワイヤがあります。

一般的にフラックス入りワイヤと呼ばれるのは神戸製鋼所のDW-100や日鉄溶接工業のSF-1に代表されるスラグ系のワイヤを指していることが多いのですが、メタル系と呼ばれるフラックス入りワイヤも存在します。

メ、メタル系!?なんか経験値が多くもらえそう…

経験値は知らないけど、いろいろなワイヤを知って使ってみることが学びにつながることはたしかだね。

本記事はスラグ系フラックス入りワイヤ(ルチール系とも呼ぶ)についてはなんとなく理解していたけど、メタル系フラックス入りワイヤの特徴についてはよく知らないという方に向けての記事になります。

「メタル系フラックス入りワイヤについて基本的なことを知りたい」、「今の溶接をもっと早く綺麗に仕上げられるワイヤを探している」、という方は是非参考にしてみてください。

目次

メタル系フラックス入りワイヤの特徴について

メタル系フラックス入りワイヤはフラックスに鉄粉を含ませることで、スラグ系以上の溶着効率を実現している溶接ワイヤになります。さらにはフラックス入りワイヤですので、スパッタ量が少なく仕上がりが綺麗というのが強みです。

ワイヤに鉄粉を配合することで溶着効率が増加します。

メタル系FCWの特徴を理解するために、ソリッドワイヤとフラックス入りワイヤの性能の違いをまとめたメーカー資料を見ていきます。

スクロールできます
ワイヤ種類大電流用ソリッドワイヤ小電流用ソリッドワイヤスラグ系FCWメタル系FCW(スラグが少ないタイプ)メタル系FCW(スラグが多いタイプ)
溶け込み深い浅いやや浅い深いやや浅い
溶接姿勢下向き 水平すみ肉全姿勢全姿勢下向き 水平すみ肉下向き 水平すみ肉
ビード外観やや不良普通美しい普通美しい
スラグ量少ない少ない多い少ない多い
スパッタ多い少ない非常に少ない少ない非常に少ない
アークの感じバチバチ良い非常に良い良い非常に良い
”神戸製鋼所 銘柄のおはなし”より ソリッドワイヤとフラックス入りワイヤの作業性比較

上記の表より、メタル系FCWはスラグが少ないタイプとスラグが多いタイプに分類されることがわかります。

この2種類のタイプへの理解を次項から深めていきます。

メタル系フラックス入りワイヤの分類

スラグが少ないタイプ、多いタイプってどういうこと?

正直わかりにくいよね。そこでこのように考えてみるとイメージしやすくなると思うんだ。

メタル系フラックス入りワイヤの分別についての考え方
  • スラグが少ないタイプのメタル系FCW=ソリッドワイヤに近い性能のワイヤ
  • スラグが多いタイプのメタル系FCW=スラグ系FCWに近い性能のワイヤ

ソリッドワイヤに近いメタル系FCW(スラグ少タイプ)

高電流用ソリッドワイヤはスラグ量の少なさと溶け込みの深さが特長ですが、スパッタ量が多いという欠点があります。

そこで理想的なワイヤを考えてみると、スラグ量の少なさと溶け込みの深さを確保しつつ、さらにはスパッタ量が少ないワイヤがベストです。この条件を満たすワイヤこそがスラグ量の少ないタイプのメタル系FCWになります。

このタイプのメタル系FCWはスパッタ量が少なく、溶着効率はソリッドワイヤ以上です。さらにビード外観も高電流用ソリッドワイヤと比較して綺麗に仕上がり、スラグ量の少なさから連続多層溶接も可能になっています。

そのため、ソリッドワイヤ以上に溶接スピードを求めて、かつスパッタ量も下げたいという建築鉄骨、建設機械、橋梁業界向けのフラックス入りワイヤになります。

代表的な銘柄
  • 神戸製鋼所「MX-Z100」
  • 日鉄溶接工業「SM-1(S)」

神戸製鋼所のMX-(Z)100や日鉄溶接工業のSM-1(S)が代表銘柄として存在します。その他にも、薄~中板用のワイヤや、溶け込みを深くしたワイヤなどがあります。

スラグ系FCWに近いメタル系FCW(スラグ多タイプ)

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スラグが多いタイプのメタル系FCWは、過去記事でも紹介したスラグ系FCWをさらに特化させた性能を有しています。ちなみにメタル系と呼ばれるワイヤは一般的にはこちらのタイプを指していることが多い印象です。

DW-100やSF-1に代表されるスラグ系FCWは造船業で多く使用されています。

造船で使用される材料は錆び防止として無機ジンクプライマーを塗布した鋼板がほとんどで、その鋼板を溶接した際、ピットと呼ばれる溶接欠陥が出やすいという問題があります。

ピット…ビード表面に発生する気孔による溶接欠陥。ビード内に発生するものは「ブローホール」と呼ぶ。

造船業ではその溶接量の多さから自動で溶接を行うことも多く、ピットに強くて溶着速度も速い(自動の溶接速度についてこられる)ワイヤが求められていました。そのワイヤとして開発されたのがスラグが多いタイプのメタル系FCWです。

人間が溶接する場合は溶接欠陥を確認しながらできるけど、溶接台車で行う自動溶接だとその判断ができないからね。

一般的なスラグ系FCWが全姿勢溶接で使用できるのに対し、このタイプのメタル系FCWは下向き・すみ肉溶接で使用することが推奨されています。しかしその能率性の高さと仕上がりの良さから多くの造船所で採用されています。

造船業に限らず、溶接長が長くてビード外観を重視する仕事では広く採用されています。

代表的な銘柄
  • 神戸製鋼所「MX-(Z)200」
  • 日鉄溶接工業「SM-1F」

上記2種が代表的なワイヤで、耐気孔性に優れたペイント鋼板用のすみ肉用ワイヤとして広く認知されています。その他にも薄板向けに特化したワイヤや、多層すみ肉溶接に強いワイヤなどもあります。

まとめ:高能率なワイヤをお探しなら是非試してみてください

本記事のおさらい
  • メタル系フラックス入りワイヤには鉄粉が入っており、仕上がりが綺麗で高能率な溶接が可能。
  • メタル系FCWはソリッドワイヤのようなスラグ少タイプとスラグ系フラックスFCWのようなスラグ多タイプに分類される。
  • スラグ少タイプはソリッドワイヤのようなスラグ少なさと、フラックス入りワイヤのようなスパッタの少なさが特徴。
  • スラグ多タイプは造船業に多いプライマー塗布鋼板の溶接で活躍している。

メタル系すごいじゃないか!

もしかすると今使っているワイヤより、メタル系のワイヤに変更した方が生産性が上がるかも!?って方は多いかもしれない。

私の経験上ソリッドワイヤやスラグ系FCWをメインの溶接ワイヤとして採用している事業者は多いのですが、メタル系FCWはなかなか見かけません。他のワイヤよりもあまり認知されていない印象です。

「もっと早く、綺麗に溶接したい」、「スパッタを減らして仕上げの時間を短縮したい」などの悩みをお持ちの方は一度メタル系フラックス入りワイヤを試してみてはいかがでしょうか?

本記事がワイヤ選定に迷っている方の参考になれば幸いです。

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