先日、当社のお客様向けにファイバーレーザー溶接機のデモンストレーション(以下:デモ)を行いましたので、本記事ではファイバーレーザー溶接機の特徴とそのときのデモの様子について紹介します。
事前に当社のお客様数社にファイバーレーザー溶接機について知っているかアンケートしてみたところ、大抵のお客様が知っており、興味があるという返答をいただきました。

動画サイトやSNSでファイバーレーザー溶接機で溶接している様子が流れてくるみたいだ!



本当にこんな溶接ができるのか半信半疑な意見が多かったよ!
これほど話題になっている機械なら一度自分の目でも見てみようと思い、ファイバーレーザー溶接機のデモ・販売を行っている「株式会社八木産機」様にご協力をお願いしました。
ファイバーレーザー溶接機に関してもっと知りたい、購入を検討しているという方は是非最後まで読んでみてください。
ファイバーレーザー溶接とは


デモの様子を紹介する前にファイバーレーザー溶接について説明します。
レーザー光を照射して行う溶接法
ファイバーレーザーは光ファイバーを媒質としたレーザー光で、その光を熱源とした溶接方法をファイバーレーザー溶接といいます。



半自動溶接やTIG溶接はアーク(電気)で溶接するのに対して、ファイバーレーザー溶接はレーザー(光)を熱源としているんだ。
ファイバーレーザー溶接の長所と短所
一般的に言われているファイバーレーザー溶接の長所と短所は以下の通りです。
- 溶接スピードが速い
- 溶け込みが深い
- 変形・ひずみ・溶接焼けが出にくい
- 熟練の技術がなくても扱いやすい
- 厚板にはあまり向いていない
- 集中性が高いためギャップに弱い
- 溶接の脚長が出にくい
- 初期導入コスト(機械の価格)が高い
動画でファイバーレーザー溶接の様子を見たことがある方は、その溶接速度の速さに驚かれたかと思います。とにかく溶接スピードは速いの一言です。
スピードが速いため、しっかりとくっついているのかを心配する声も聞かれますが、実際は熱の集中性が高いため、溶け込みは深く、それでいて変形・ひずみ・溶接焼けが出にくいという長所があります。
しかし集中性の高さゆえギャップ(隙間)に弱く、脚長が出にくいという短所もあります。さらに機械自体の金額も高価で、ファイバーレーザー溶接を行うための環境づくりも必要になります。



以上の性能からファイバーレーザー溶接はひずみやすい薄物の溶接であればあるほど効果的なんだ。
ファイバーレーザー溶接に関してよくあるご質問
ガスや溶接ワイヤは必要なのか
シールドガスとしてアルゴンまたは窒素を使用します。理想ガスはアルゴンなのですが、窒素でも溶接可能です。
また、溶接ワイヤは溶接する材料に応じたソリッドワイヤを使用します。不活性ガスでワイヤを送る溶接なので、MIG溶接に近いイメージです。
溶接面を使用してもよいのか


残念ながらアーク溶接の際に使用していた溶接面は使用厳禁です。ファイバーレーザー溶接で発される光はレーザー光用の保護具で対策する必要があります。
また、レーザー光が周辺に影響を及ぼさないように専用のブースを設けるなどの対策も必要になります。
ファイバーレーザー溶接機使用に際してはクラス4レーザー対策が必要になります。
実際のデモの様子


今回のデモで使用したファイバーレーザー溶接機は八木産機さんのFLW-2000Hというモデルで、仕様については以下の通りです。
- 出力2.0kWの水冷式(溶接能力:鉄・ステンレス・アルミ各種6mm)
- 7種のウェービングモードを搭載した2軸溶接トーチ
- 2種類のスプールが搭載可能なワイヤーフィーダー



なんかいろいろ複雑な機能がありそう!?



安心して!使い方はメーカーの営業の方が丁寧に教えてくれるよ!
機械の説明や使い方のレクチャー


ファイバーレーザー溶接機を初めて使うというお客様が多かったため、まず始めはファイバーレーザー溶接機とそれに付属するワイヤーフィーダーや操作パネルの説明を丁寧に行っていました。
ワイヤーフィーダー(送給装置)は2種類のワイヤーをセットでき、鉄とステンレスといった具合に異種の溶接ワイヤーをセットして簡単に切り替えができます。
操作パネルはタッチパネル形式になっており、溶接する材質や板厚を入力することで適した溶接条件を出力してくれます。また、パルス機能も搭載しているためウロコ状の溶接ビードも機械の設定で再現することが可能です。
ファイバーレーザー溶接を実際に体験


お客様には溶接してみたい材料を持参していただき、実際にファイバーレーザー溶接を体験していただきました。
デモ機で使用した2軸トーチは溶接と同時にワイヤーが送給され、トーチがワイヤーの勢いで自然に後ろに進んでいきます。ほとんど力を入れずとも均一の速度が保たれるため、誰がやっても差がつきにくい溶接になり、品質が安定します。
普段から半自動溶接に慣れているお客様の方が、ファイバーレーザー溶接に戸惑っているような印象を受けました。それとは逆に普段の溶接がそこまで多くないお客様の方がトーチ操作のコツをつかむのが早いように感じました。



溶接経験が少なくても精度の高い溶接が簡単にできるなら僕にもできるかもしれない!



難しい薄物の溶接が初心者でもできるようになるのは魅力的だね。
実際の溶接結果も良好で、薄物であればあるほど効果を実感できる結果になりました。板厚の厚い材料はもう少し脚長がほしいという意見がきかれ、薄いものはTIG溶接でやるよりも圧倒的に速く、ひずみも少ないという反応が多く見られました。


私が思うファイバーレーザー溶接機のこれから


ここ最近は多くのメーカーがファイバーレーザー溶接機を販売しており、業界でも注目度が高まってきています。
そのような流れから、有識者は間違いなくファイバーレーザー溶接機が今後の溶接業界に普及してくると読んでいるのでしょう。私の考えを述べさせてもらうと、製造業や建設業は今後以下のような問題がより顕著になってくると考えています。
- 溶接技術者の高齢化・人手不足
- 働き方改革による作業時間の短縮
- 炭酸ガスの供給不安
こういった課題に対し、熟練度をあまり必要とせず、作業効率が良く、炭酸ガスを使用しないファイバーレーザー溶接がスタンダードになってくる可能性は十分考えられます。
今後使用事例が増え、溶接資格制度が整えば、TIG溶接に代わる溶接方法として広く普及されるかもしれません。特に板厚の薄い製缶溶接、板金溶接をしている現場では導入が進んでくるでしょう。



大手の企業が使い始めた!なんて情報が出回れば一気に広まる可能性はあるね!
最後に、「ファイバーレーザー溶接が気になるけど、実際どんなものなのだろう」と思っている方はまずはデモを体験してみるのが一番です。
当社や最寄りの販売店にお問い合わせいただければ、体験のご案内も可能です。今回ご協力いただいた八木産機様は全国でデモ対応をされているので、是非一度試してみてください!
コメント
コメント一覧 (1件)
とても勉強になりました。このブログを用いて営業したいくらいです。いや使用させていただきます笑